2009年1月3日土曜日

『日本の思想』

  丸山真男の岩波講座への論文2報と岩波文化講演会での講演記録2つをまとめたもの。岩波新書。題に取られている論文は、日本における哲学、文学、社会科学、政治など人文科学の歴史を大局的に概観するという、それまでになかった試み。4編を通じて、僕の(ということは、多くの日本人の)日本社会認識を批判的にさらに深いところまで導いてくれるような論点で満ちている。


 中国や韓国に起源をもつ「伝統」文化と主に明治維新以降に取り込まれた入れた欧米文明という論点を例に挙げると、日本人はいつの時代も現在我々がアメリカの文明を取り入れているのと同じ仕方で強力な国外の文明を取り入れて来たと批判している。したがって、中国や韓国から取り入れた文明を日本「本来」の文化として擁護し、欧米文明の影響によって変化することを嘆くのは、理由がないと言っている。


 僕が行った中学高校には三理想と言うものがあり、その一つが「東西文化融合のわが民族理想を遂行し得べき人物」だった。たかが中学高校のスローガンだと言ってしまえばそれまでだが、僕は愛校心があるので考察すると、「東西文化の融合」が「わが民族理想」なのは、丸山によると日本が東洋・西洋分け隔てなくその時々に強力な文明を文化の中に取り入れて来たためだということになるだろう。それではこの民族が東西文化を融合するのに適任かということについても、本書の中で触れられている。

0 件のコメント: